「セックスレス」でも仲のいいご夫婦(カップル)というのは最近増えているスタイルの1つですね。お互いにそれで満足していれば何も問題はありませんが、どちらか、もしくはお互いに不満や我慢が隠れているとしたら、それは早く解決したいことですね。性のことは夫婦関係(パートナーシップ)においてとても大切なことです。恥ずかしいとか、大したことじゃないから、今さら、という、お気持ちがあるかもしれませんが、だからといって大切なことを放置しておくと、そののちに思いもよらないことが起こりかねません。 「性のこと」にはご夫婦とはいえど、いやご夫婦だからこそ、しっかりとコミュニケーションを取って、お互いを理解し、双方で納得できる形を作っていって欲しいと思います。今回は男性側の心理と「セックス」が「象徴するもの」についてお話したいと思います。参考にしてもらえると幸いです。
べにさん
「仲は良いのに夫婦生活で毎回同じ壁にぶつかってしまう」
30代女性です。現在旦那と一児の息子と3人で暮らしており、彼とは交際期間から含めて8年の仲になります。恋人同士の頃や、産前は自分自身もセックスに対して抵抗感がなく、週に3〜4ほどの頻度だったのですが、子供が産まれてからの数年、セックスの頻度は多くても月に一回程度となってしまいました。
全くのレスと言うわけではないですし、彼との仲も良好ではあるのですが、この数年、私自身セックスへの抵抗感がとても強く、行為の前や最中にポロッと涙が出てしまうことが増えています。
私が涙を流してしまうことで、セックスも中断となってしまい、彼も「自分が嫌われているのではないか」と感じたり、変わってしまった自分のせいで彼を悲しませてしまっている、私も自己嫌悪に陥るという悪循環を繰り返しては、その度に話し合いを重ねています。
話し合いをすることで一時的にはそうした状況が改善するのですが、またしばらくすると私のセックスの拒絶癖(彼より先に寝る、体調が悪いと言う)が出てきてしまいます。
彼のことは大好きなので、もうこれ以上悲しい気持ちにさせてしまうのはよくないと思い、昨年末ごろに思い立って夫婦関係についてカウンセリングを受け、記載した内容をカウンセラーの方にお話ししてみたのですが、話している際に話すことが出来ないほど涙が止まらず、「夫婦関係よりも、あなたのそのしんどさや深刻さの方がすごく気になる」と言われました。(インナーチャイルドに何かあるかもとのこと)
以来、気になってインナーチャイルドについて調べたりするなかで、根本先生の本やこちらの存在を知りました。少しずつ自分の過去や価値観について向き合う中で、自分の育った環境と性に対する価値観ついては引っかかる部分があります。
・恋愛や性に対してタブーのような雰囲気の家庭だった(友達は彼氏の話などをしているが、自分は一切そう言ったことについて聞かれないなど)
・母があざとさやセクシーさで売り出しているタレントさんや女優さんに対して極端に嫌悪感を示す
・自分のわがままが原因で幼少期に家に1人で置いて行かれたことがあり、自分のわがままは誰にも許されないというイメージ。(本音を言ったら嫌われると今も思っている)
・父が逃げや甘えに対して厳しいタイプだったので、人に甘えたり頼るのが苦手。など。
彼との関係を真剣に考えているからちゃんと向き合うためにカウンセリングを受けたことや、自分の過去についても話をしてみたところ、一緒に頑張っていこうといってくれたのですが、状況は一進一退。
彼の中でセックス=愛の確認という認識なのに対して、私はセックス=いけないものという認識のズレが大きな原因になっている気がするのですが、何から取り組んでいくべきなのか全くわかりません。
先日もついに彼から「もう価値観が変わってしまったのならしばらくはセックスしないほうが良いのかもしれないね」と言われてしまい、また彼を傷つけてしまったのではないかと落ち込んでおります。
まとまりのない文章で大変恐縮なのですが、自分だけではもう解決策がみつからず、ぜひアドバイスをいただけたらと思います。
べにさん、こんにちは。かかりつけカウンセラーの伊藤です。
よろしくお願いします。
ご出産後にセックスへの抵抗感が出てこられたのですね。
彼の中では「セックス=愛の確認」で、対して私は「セックス=いけないもの」という認識があり、そのずれが原因ではないか、と思われている状態なんですね。確かに「セックス」というものが、お互いに何を意味しているのかは、重要な要素です。しかしながら、例えば、男性側がただ本能的な性欲のため、と感じていて、女性側は出産のため、という意識が強いカップルだと、皆さんはどう思いますか?うまくいくと思いますか? うまくいかないかない、と思いますか?
正直、答えはわかりませんよね。
セックスに対する認識は重要な要素であることは間違いありませんが、セックスをするのには、誰しもは複数の意味付けをしているものです。男女に関わらず、性欲の解消がしたいとき、寂しさを埋めたいとき、愛情を確認したいとき、子作りをしたいとき、などなどたくさんあります。
ですので、べにさんが言われる、彼と私の認識のずれが原因というのは半分は正解で、半分外れていると言えるでしょう。
◆
ちょっと変に聞こえるかもしれせんが、今日のエッチは「性欲処理のため」「なんか寂しい気分だから」「子供が欲しいくなったから」みたいに潜在的な気持ちがその時々で一致していると双方の満足感は得られやすくなります。ただ意識的にいちいち、今日はどんな理由でセックスをするの、なんてことは考えないでしょうし、潜在的な気持ちを確認しようにも「気持ち」というものは、複合的なもので、一つの気持ちだけで成り立っているわけではないですから、結局のところ、双方の「認識の違いを合わせる」というのも、難しい作業になります。
現実的にはセックスのため、と考えるより、パートナーとして、お互いの理解を深める、ということで普段から意識してコミュニケーションを取ることが大切になります。
そういう意味では、べにさんはご主人とよく話されているようなので、とてもよいパートナーシップを築かれていると思います。
◆
では「認識のズレ」がセックスレスの主たる原因ではないとすると?
(はい、ここからが今日の本題ですよー!)
べにさんの自身の中での「ズレ」が生じているように思われます。
出産前と出産後にべにさん自身の中でセックスに対する「ズレ」が生じたことが主な原因かと思われます。
出産後に「セックス=いけないもの」という感覚が強くなってしまわれたのはなぜでしょう? べにさん自身が書かれているように、もともとインナーチャイルドの中にセックスへの抵抗を感じるものはあった、とも考えられますが、出産前にはセックスに抵抗を感じていなかったことを考えると、インナーチャイルドの中に今回の問題に直接的に繋がる原因は薄いかと思われます。
◆
こういうお話があります。
一人目を産んで子育てをしていると、毎日が大変で自分が「親」であることに自信が持てなくなり、「親」であることから逃げたくなる。こういう気持ちが強まってくると「セックス」の意欲が下がるようなことがあります。また最初のお子さんにお病気や不自由なことがあったり、自分事ではなくても、周囲のことでも、子育てにまつわるネガティブな感情に触れたりすると、自分事のように感じることがあります。そういうときも「セックス」に対してネガティブな感情を抱きやすいです。
◆
なぜ、これらの出来事でセックスに抵抗を感じてしまうのか?
セックス=「命」の象徴でもあります。
セックスは「命(性)」を感じることでもあります。
潜在的にこの「命」というものの扱いに自信がなくなったり、怖くなったりするような出来事を経験するとセックスが怖くなっていきます。
「セックス=命=扱うのが怖い=(私が扱うことは)いけないこと」
◆
それとは別のアプローチとして少し男性心理に触れておきます。
男性が女性に求めるものは大きく2つです。
1つは母性、字がごとく、母親的な許しや安心のマインドです。
もう1つはエロス「性的魅力」です。
男性は単純な性的欲求がパートナーから得られなくなると、パートナー以外から得ようとします。(何が原因であれ、パートナーから得られないことは女性が思っているよりも男性は何倍も辛く、傷つきます。言葉では「大丈夫」としか言いませんから注意してくださいね)べにさんは、既にこのままだと、夫に応えられないことを申し訳ない、と思う一方で、夫が離れていくかもしれない、という怖れも感じておられるのかもしれせんね。
ここでよく起きるのが出産後、彼女がお母さんとなり、男性が彼女に性的魅力を感じなくなってしまうことです。もしくは彼女がお母さんとなり、女性としてのモードに入れなくなってしまうことです。その結果として、彼氏彼女から、お父さんお母さんになり、お父さんお母さんが今までみたいにセックスする?って考えると、そこで何か気持ち悪くなったり、違和感を感じたりするようになり、夫婦の関係は悪くないのに、自然とセックスが遠のいて、いくことがあります。
◆
いずれの理由にせよ、ここでべにさんに求められるのは「成熟さ」です。
べにさんは母親として、命を育てること。
一人の女性として、男性を愛し、愛されること。
この2つを統合して、持ち備えることが課題となります。
わかりやすく言いますと、より魅力的な女性へとバージョンアップする、ということです。
成熟したパートナーシップを築かれているご夫婦は相互依存の関係を持たれています。相互依存でいうセックスとはエネルギー交換みたいなものなんのですね。(そのあたりのお話はまたの機会に)
◆
ここまでお話した知識を持っておかれることも、心を落ち着かせるには役に立つと思います。また具体的な対策としては、ご主人とのコミュニケーションは継続して理解してもらいながら
・ハグやキスなど、スキンシップを増やす
・好きや愛しているの言葉を日常的に言う(表現する)
・出来るだけ、デートや旅行など、2人で過ごす時間を作る
・「挿入」に強い抵抗があるかもしれません。はじめから今日は「挿入なし」と決めておいて、前戯、男性のマスターベーションには付き合う。可能なら、私のマスターベーションを彼に手伝ってもらう
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最後に少し厳しいことを言いますが、べにさんがセックス中に流された涙の理由はなんですか?
彼に対して「申し訳ない」というものではないと思いますが、その理由がもし「自分のため」であったとしたら、彼は報われません。
仮にべにさんがその涙の理由を自分でもうまく説明できないとしても、説明することを諦めずに彼と向き合って下さいね。その素敵な彼に申し訳ないと背をむけることはしないでくださいね。彼の前からいなくならずに、彼の見えるところにいてあげるようにしてくださいね。それだけでも彼に安心を与えることが出来ますから、彼に申し訳ないという気持ちや彼がいなくなる怖れは和らぎます。べにさんのお悩みは彼の悩みでもあります。そのことを感じられたら、仮に涙を流されても、そのあと、彼の顔を見ると、一人じゃない、好きな人が目に前にいて、一緒に悩んでくれていると、ほっとして、必ず笑顔や微笑みに変わるはずです。 どうぞ、そのことを忘れずに、命(性)に対するコミュニケーションを彼と一緒に取ってみてくださいね。そうすることでお二人の関係はより深い絆で結ばれることになると思います。
お家族のお幸せを願っております。
今回の回答は以上になります。
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