今回のご相談
ししろうさん
夫が転職のため試験を受けていますが、落ちてほしいと思ってしまいます。私が住みたいと望んでいた土地に引っ越せるメリットがありますが、経済的な負担を考えると躊躇します。
夫は転職願望が強く、経済的なことについては算段がついているようですが、独身時代からのローンがあります。
転職先はお給料が下がることもあり、これらが今後負担になってくるのではとないか思うと心配です。
私は経済的に苦労をしたので嫌だと伝えたところ、本人は気持ちが変わらないようです。
相手の失敗を願うのはよくないことですが、身近な人間に対してこのように思ってしまうのは、私にも問題があるように思います。
心理の専門家にお話を聞いてみたいです。
よろしくお願いします。
ししろうさん
こんにちは、ご相談ありがとうございます。
かかりつけカウンセラーの伊藤です。
「夫の転職が失敗してほしい」
というタイトルに惹かれて、つい答えたくなりました。
やっぱり男の価値は「お金ですよね~」笑
もとい・・・お金も「魅力や価値」の1つですよね。
最初はお金についてお話してみようかと思ったのですが、何度もご相談文を読み返しているうちに「お金のこと」ではなく、「意見の相違」に焦点を当ててお話することにいたしました。
「パートナーシップにおける意見の相違が生じた時にどうすればよい?」
その観点から回答させていただきますね。参考になれば幸いです。
◆
好きな方と意見が違った場合、皆さんにはどうされていますか?
こんな状況があるとどうでしょうか?
ケース①
今日何食べるー?
B男:僕は焼き肉がいい!
A子:私は脂っぽいのは嫌、パスタがいい!
B男君が優しければ「しょうがないな~A子がそういうなら今日はパスタにしょう」
A子さんが頭のいい人であれば「B男が焼肉がいいって言うなら、焼肉でいいよ、でも次は私の言うこと聞いてね」と答えるでしょう。
どちらも問題ありませんよね。
ではこんな「違い」はどうですか?
ケース②
C男:「僕はアメリカに渡って弁護士をする。ずっと目標にしていた人から誘いを受けたんだ」
D子:「えっ?何を言っているの弁護士なら日本でも出来るじゃない、生まれたばかりのこの子はどうするの、私一人で育てるの? 私はアメリカになんて行かないわよ」
ケース①のようにお互いが譲り合ったり、我慢できる程度のものなら、好きな人と喧嘩をしてまで自己主張をすることもないかもしれません。
ケース②ではどうでしょうか、お互いのアイデンティティや信条とする価値観が違ったときはいかがでしょうか?
パートナーシップも長くなってくるとケース②のような「違い」を感じる場面も出てくるのではないでしょうか?
◆
ししろうさんのご相談はケース②のアイデンティティや信条とする価値観の違い、が発生しているように思われます。
ご主人が転職すると経済的なことが負担になってくるのではないか、と心配されていますね。ししろうさんはご自分のお気持ちも「経済的に苦労したので嫌だ」とはっきりと伝えておられます。言いにくかったかもしれないですがご自分のお気持ちを伝えることが出来ているのは、とても大事なことですよね。
ししろうさんには経済的な不安があるのも事実でしょうが、もっと、ししろうさんの不安を刺激しているのは、私が「嫌だ」と言っているのに、そのうえで、ご主人が意見を変えてくれなかったことなのではないでしょうか。
伊藤はこう思うのです。
私たちが好きな人との関係で意見が違ったとき、辛くなるのは
「私はこんなにあなたのことが好きなのに、あなたがそんなことを言う(すると)と、私はあなたのことを好きーって言えなくなるじゃない、私はあなたのことを嫌いになりたくないの、私はあなたのことを好きでいたいの、だからそんなこと言わない(しない)で!」 こういうお気持ちがあるからではないでしょうか?
中には「私のことが好きなら言うこと聞いてよー」と思われる方もいるでしょう。
こちらも同様ですね。
好きな人に「好き」と言えないのは(私たちが考えている以上に)辛く、苦しいことなんです。
◆
ししろうさんはご主人の失敗を願ってしまう、こんなことを思う私にも問題があるように思います、とおっしゃられています。確かに問題はあるかもしれませんね。ではそれはどんな問題なのでしょうか?
おそらくこんな感じです。
子供:「ねぇねぇお父さん、あのちいかわのぬいぐるみ買ってー!」
お父さん:「今日はダメだよ、今日はお父さん、念願の東京マラソンを走るんだ」
子供:「えっー私かけっこにがてだよー、お父さんだって知ってるじゃん、私、転んでケガしたこと」
お父さん:「知ってるけど、今日はお父さんが走るんだよ。お父さんは東京マラソンを一度走ってみたかったんだよ」
子供:「お父さんきらーい、お父さんなんて転んでしまえばいいのに…」
◆
自分の願いが受け入れてもらえなかった時、ちょっとだけ相手の不幸や失敗を願ったりすることはありますよね。でもそれは決して心から願っているものではなく(自分の力ではどうしようもないから)ちょっとだけでも私の願いを叶えてくれなかったお父さんに一矢報いてやろうとしただけにすぎません。
そこに愛があればかわいいものですが、もしもお父さんがマラソンで転倒して骨折など大けがをした場合、このお子さんはどう感じるでしょうか?「私のせいで」と感じてしまうのではないでしょうか...仮にお父さんがマラソンではなく、病気になったり、他のことで苦しい状況になったとしても同じかもしれませんね。
ししろうさん、そういう意味(あなたが罪悪感を持つことになる)では、あなたが相手の失敗を願うことには問題はあると思います。
◆
パートナーとの間にアイデンティティや信条などの価値観の違いが見つかったときに打開策が見つからないと「もうこの人のことを愛せないかもしれない」と感じてしまうことがあります。これは「好きな人のことを好きと言えなくなる」辛さや苦しみです。
ではこんな時の打開策は?
事柄や物質的なことでの解決を目的とせず、感情的な解決をはかることが一つの有効な手立てとなります。
事柄や物質的なこと?
事柄や物質的なこと、とは、ししろうさんのことで例えますとご主人が転職をする、しない、とか、お金にゆとりがある、とかない、とかそういうことになります。
感情的なこと、とは、ご主人がなぜ、あなたを不安にさせてまで試験を受け、転職を望んでいるのか? ししろうさんがなぜ、夫の失敗を願うくらい、不安を感じているのか、お互いの感情を理解し合うことを目的として、話をしてみる、ということになります。
この場合、どのような結論になるかはわかりませんが、おそらくお互いが妥協しあえる結論や、嫌いにならずに済む結論にいたる可能性は高くなります。
うまくいくと、これまで以上のパートナーシップの絆を深めることも出来ると思います。
今回は以上となります。
◆
好きな人と意見が違い、喧嘩をしてしまうことは少なからず辛いですよね。
好きな人であればあるほど、その解決策が見当たらないと、もうどうでもいいー!っと投げ出したくなったり、ときにパニックになってしまいそうになることもありますよね。
もしも、そんな場面にみなさんも直面した時は一度試してみて下さいね。
事柄や物質的なことに捕らわれず、お互いの感情をベースに理解し合うことに打開策を見出してみてくださいね。
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